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  1. その日の試験は“グループディスカッション”でした。採用希望者が何人か集まって、与えられたテーマについて議論し、審査官は黙ってその様子をチェックする、という試験です。私が部屋に入ると、そこには1人の審査官と、7人の大学生がいました。最初に全員の自己紹介。いわゆる“名門大学”の学生も何人か混じっていたのを覚えています。自己紹介が終わると、審査官は一枚の紙を全員に配りました。そこに記されていたのは以下のリストです。

    ・酸素ボンベ(40kg×8)
    ・飲料水(30L×8)
    ・パラシュート
    ・4平方メートルの白い布
    ・ビスケット
    ・粉ミルク
    ・非常用信号弾
    ・宇宙食
    ・ライター
    ・45口径の拳銃
    ・方位磁石
    ・無線機(受信のみ)
    ・救急用医療セット

    なんだこりゃ、と私が顔をあげると、審査官は宣言しました。「あなた方8人が乗っていた宇宙船が故障し、月面に不時着することになりました。着陸の際の衝撃で宇宙船は大破。あなた方にお渡ししたのは、中から持ち出すことができた品物のリストです。救助隊とのランデブー地点まで180km、あなた方はその距離を自らの足で進まなければなりません。現在の状況下でリストの品物に優先順位をつけてください。質問は一切受け付けません」

    …まさか就職活動中に月面で遭難することになろうとは。予想外の展開に、私はわくわくする心を抑えられませんでした。まず、これらの品物は宇宙空間仕様になっているのかを考えねばなるまい。そうでなかったら、ライター、拳銃は使い物にならない。おそらく信号弾もだめだろう。そしてさらに重要な点として、装着している宇宙服は、外部から食料を供給することが可能なのかという問題がある。月面で顔をむきだしにしたらどうなるかなんて考えたくもない。

    そういったことを私が一人で考えていると、他のメンバーが手をあげて自分の主張を始めました。その内容は、驚くべきものでした。「パラシュートはあったほうがいいでしょう。崖があったら降りられない」「この白い布ですけど、ライターで燃やせば救助隊への目印になりますよね」「酸素ボンベは重すぎて持ち運べない。海にもぐる必要はないだろうし、置いていきましょう」「水も最小限でいいんじゃないですか?足りなくなったら途中でくめばいい」

    途中まではジョークに違いないと思いながら聞いていましたが、誰もにこりともしません。どうやら彼等は本気のようです。やがて私の番がまわってきたとき、すでに私は冷静さを失っていたのでしょう。

    「月をなめるな」

    それが私の第一声でした。その後、延々と月面について語り、そのままタイムアップ。当然のように不合格でした。